5.2. 日本語読み調整テキスト

5.2.1. 音声合成用の読みがなとは

音声合成用の読みは、いわゆる一般の「ふりがな」に近いものですが、主に次の点で異なります。

  • 読みは全て全角カタカナもしくは半角カタカナで記述します。
  • 長音化する発音の場合は、長音化させた表現にします。

例えば、「東京」は、ふりがなでは「とうきょう」ですが、読み調整テキストでは「トーキョー」と表します。逆に「小売り(こうり)」のように長音化させたくない場合は、長音化させない表現「コウリ」で記述して下さい。

母音が無声化する発音の場合は、無声化※させた表現にします。例えば、「空き地」は、ふりがなでは「あきち」ですが、読み調整テキストでは「アキ%チ」と表します。

※「無声化」とは母音部分が発声されない現象で、読み調整テキストでは「%」を付与して表します。どの音節が無声化可能であるかについては、 読み調整テキストで使用可能な文字 をご覧ください。

助詞の「を」「は」「へ」などは、読み調整テキストではそれぞれ「オ」「ワ」「エ」と表現します。

5.2.2. アクセント

アクセントとは、日本語では、発音時の拍(音節)が高い音から低い音に変わることを指します。低い音に変わる直前の高い音で発音する拍に、アクセントが置かれていることになります。例えば、「関西」を発音する場合は、「か」「ん」「さ」「い」の各音節を「高」「低」「低」「低」のような声の高さで発音しますが、このときは「か」にアクセントが置かれていることになります。

「金沢」を発音する場合は、「か」「な」「ざ」「わ」を「低」「高」「低」「低」のような声の高さで発音しますが、このときは「な」にアクセントが置かれていることになります。「川崎」を発音する場合は、「か」「わ」「さ」「き」を「低」「高」「高」「高」のように発音しますが、声の高さが「高」から「低」に変わるところがないため、このような場合はアクセントがない、もしくは、平板アクセントといいます。

アクセント位置を表現する記号には、通常のアクセントを表す「’(シングルクォーテーション)」、弱いアクセントを表す「*(アスタリスク)」、および、非常に弱いアクセントを表す「”(ダブルクォーテーション)」があり、アクセントを置く音節の直後に挿入して用います。例えば、「カ’ンサイ」のような表記になります。

アクセント位置を表現する記号は、必ず音節と音節の間に挿入してください。例えば、「中部」を発音する場合は、「チ’ューブ」ではなく「チュ’ーブ」と記述します。また、ひとつのアクセント句には複数のアクセント記号を挿入することはできません。(複数指定された場合には、1つ目のアクセント記号のみが有効となります。)

「アクセント句」とは、アクセントが0ないし1箇所置かれた語句の単位です。多くの場合は、文節の区切りに一致しますが、複合語のようにアクセントが複数置かれた文節では、アクセントが0ないし1箇所になるように分割された単位となります。なお、読み調整テキストの1アクセント句あたりの最大音節数は38です。38音節より長いアクセント句については、自動的に38音節で分割されて読み上げ処理が行われます。

5.2.3. 区切り

区切りには、アクセント句の区切りの種類を表す記号と、文末の種類を表す記号があります。区切り記号の種類によって、アクセント句間の修飾関係やポーズの長さなどが決まります。例えば、「台風8号は、このあと北東方向に進みます。」という文を発声する場合、文節という単位で区切ると、この文は「台風8号は」「このあと」「北東方向に」「進みます」のように分けられます。

さらに、「台風8号は」の部分を発声するときは、「台風」と「8号は」の2つのアクセント句に分かれます。なぜなら、「た」「い」「ふ」「ー」と「は」「ち」「ご」「ー」「わ」を、それぞれ「低」「高」「高」「低」と「低」「高」「低」「低」のように発声し、それぞれにアクセントが置かれるためです。したがって、この文章は「台風」「8号は」「このあと」「北東方向に」「進みます」の5つのアクセント句から構成されていることになります。

そして、「台風」と「8号は」の間はポーズなし、「8号は」と「このあと」の間は短いポーズを挿入、「このあと」と「北東方向に」の間はポーズなし、「北東方向に」と「進みます」の間はポーズなし、「進みます」は文末を下げる、という読み方になるように、それぞれ区切り記号を指定していきます。

タイフ'ー ハチ*ゴーワ,コノア'ト/ホク%トーホ'ーコーニ ススミマ*ス%.

区切りの表現に利用可能な記号は、次節を参照して下さい。

5.2.4. 読み調整テキストで使用可能な文字

読み調整テキストで使用可能な文字は「音節として使用可能な文字」、「アクセント位置を表現する記号」および「区切りを表現する記号」があります。詳細は、以下の表をご覧ください。定義にない文字入力に対する動作は保証しません。

音節として使用可能な文字

ア イ ウ エ オ
カ キ ク ケ コ キャ キュ キョ
ガ ギ グ ゲ ゴ ギャ ギュ ギョ
サ シ ス セ ソ シャ シュ シェ ショ
ザ ジ ズ ゼ ゾ ジャ ジュ ジェ ジョ
タ チ ツ テ ト ツァ ティ トゥ ツェ ツォ チャ チュ チェ チョ
ダ ヂ ヅ デ ド ディ ドゥ デュ ヂャ ヂュ ヂェ ヂョ
ナ ニ ヌ ネ ノ ニャ ニュ ニョ
ハ ヒ フ ヘ ホ ヒャ ヒュ ヒョ ファ フィ フェ フォ
バ ビ ブ ベ ボ ビャ ビュ ビョ
パ ピ プ ペ ポ ピャ ピュ ピョ
マ ミ ム メ モ ミャ ミュ ミョ
ヤ ユ ヨ
ラ リ ル レ ロ リャ リュ リョ
ワ ウィ ウェ ウォ ヲ ン ッ ー
キ% ク% シ% ス% シュ% チ% ツ% チュ% ヒ% フ% ピ% プ% (無声化音節)

※ご注意:

  • カタカナであれば、全角文字、半角文字のどちらでも使用できます。
  • 読み調整テキストを先頭から解釈したときに、音節記号の表中に記述のない小さいカタカナ文字が単独で存在するときは、それぞれ大きなカタカナ文字に読み替えられます。
  • 音節記号の表中に記述のない無声化音節は、「%」が無視されます。
  • 利用する話者(音声合成辞書)によっては、一部の音節記号を正しく発声できない場合があります。

アクセント位置を表現する記号

「’(シングルクォーテーション)」 通常のアクセント
「*(アスタリスク)」 弱いアクセント

※ 全角文字、半角文字のどちらでも使用できます。

区切りを表現する記号

「 (空白)」 直後の語を修飾、ポーズなし
「/(スラッシュ)」 少し後ろの語を修飾、ポーズなし
「:(コロン)」 アクセント句間の短いポーズ(約0.1秒)
「,(カンマ)」 アクセント句間の長いポーズ(約0.3秒)
「.(ピリオド)」 文末を下げる抑揚で長いポーズ(約0.8秒)
「?(クエスチョンマーク)」 文末を上げる抑揚で長いポーズ(約0.8秒)

※ 全角文字・半角文字のどちらでも使用できます。

なお、ポーズを伴う区切り記号の直前に、「@(アットマーク)」と数字2桁を挿入することで、10ミリ秒単位でポーズの長さを指定できます。例えば、「キョ’ーワ@05,」とすると、「今日は」の後のポーズの長さが50ミリ秒となり、「キョ’ーワ@20,」と指定すると0.2秒の長さのポーズが挿入されます。

5.2.5. 読み調整テキストの編集例

例1) つながって読まれている箇所にポーズを入れる

入力テキスト

北日本の日本海側を中心に荒れた天気が続くでしょう。

自動合成直後の読み調整テキスト

キ%タニホ'ンノ ニホンカイガワオ チューシンニ アレタ テ'ンキガ ツズク*デショー.

編集後の読み調整テキスト

キ%タニホ'ンノ ニホンカイガワオ チューシンニ,アレタ テ'ンキガ ツズク*デショー.

「中心に」と「荒れた」がつながって読まれているので、間にポーズを入れた。

例2) ばらばらに読まれている2つの語をつなげて読ませる(1)

入力テキスト:

緊急地震速報や豪雨予報の迅速な報道

自動合成直後の読み調整テキスト

キンキュージシンソ'ク%ホーヤ:ゴ'ーウ ヨホーノ ジンソクナ ホードー.

編集後の読み調整テキスト

キンキュージシンソ'ク%ホーヤ:ゴーウヨ'ホーノ ジンソクナ ホードー.

「豪雨」と「予報」がばらばらに読まれている。1つの単語「豪雨予報」となるよう、語間の空白を削除し、アクセントの位置を調整した。

例3) ばらばらに読まれている2つの語をつなげて読ませる(2)

入力テキスト

投擲競技とは、陸上競技で、円盤投げ、砲丸投げ、ハンマー投げの総称。

自動合成直後の読み調整テキスト

トーテキ%キョ'ーギトワ,リクジョーキョ'ーギデ,エンバン/ナ'ゲ,ホーガンナゲ,ハンマーナゲノ ソーショー.

編集後の読み調整テキスト

トーテキ%キョ'ーギトワ,リクジョーキョ'ーギデ,エンバンナゲ,ホーガンナゲ,ハンマーナゲノ ソーショー.

「円盤」と「投げ」がばらばらに読まれている。1つの単語「円盤投げ」となるよう、語間のスラッシュとアクセントを削除した。

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